以前から知人であった料理研究科のT様は、ご主人様の仕事の関係でしばらく柏を離れ大阪で生活されていました。そののちに柏に帰ってくる事が決まり、以前からの夢で、温めていたキッチンのリフォームを行うため「小さな仕事ですけど受けてもらえますか?」とメールでお問い合わせをいただきました。私からは「仕事の大小は問いません。」とお返事を返し電話・メール・FAX等で連絡を取り合う形で柏・大阪間の遠距離プランニングがスタートしました。
長年リフォーム温めていたT様にはやりたいことが明確にあって、
コンセプトから使いたい機器類・性能要求などを要望書にまとめて送ってこられました。
それに対し私が実際の建物の条件にあてはめ計画案をつくって説明させて頂くという流れで
新しい「住まいのカタチ」が出来上がっていきました。
リフォーム前はキッチンとリビング・ダイニングが別々に区切られていました。キッチンは一般的なI型のシステムキッチンで料理研究家としての仕事や料理教室を行うには狭く調理道具や食材をストックするための収納も足りない状態でした。
一方でリビング・ダイニングは十分な広さがありキッチンはもっと広く使いたいのにリビング・ダイニングは余裕があるという状況で需要と実際の間取りにアンバランスが生じていました。
T様開いている料理教室は毎回4~5名の生徒さんが参加されます。それだけの人数がキッチンが同時に作業し、手元の作業が皆から見えるようにする等の工夫と実用性が求められていました。
キッチンスペースが面積的に足りなかった点は、構造上必要ない壁と扉を取り除いてキッチンとリビング・ダイニングをひとつの空間にしキッチンをダイニング側に拡張することで解決をはかりました。同時にダイニングスペースが縮小する事になりましたが、壁際に収納付きのベンチを設けコンパクトにまとめることで補っています。
作業動線の点は、キッチンスペースの中心にある壁に沿うようにしてアイランド型のキッチンを設置し生徒さんが先生を中心に作業台を取り巻くようにして動けるようにしました。また、キッチンと食器棚や壁とのクリアランスをしっかり確保することで物を持った状態でもすれ違えるようになり、複数の人がスムーズに動きながら同時作業ができるようになりました。
先生を囲んで調理、出来上がった料理は自然光が入って明るいダイニングでおしゃべりをしながら楽しめるようになりました。
ご自宅で料理研究家としての仕事をしているT様は仕事場と家庭生活を切り分けるのではなく一体となり、つながりを持った場にすることを希望されていました。
家庭生活の中でのキッチンは、ひとつの空間になったことでキッチンスペースが孤立した空間ではなくリビング・ダイニングにいる家族ともほど良くつながりを持ちながら食事の準備や後片づけができる様になりました。食を通し家族が集まりコミュニケーションの生まれる場としてキッチンが中心的な役割を果たしています。
仕事場としてのキッチンはレシピの研究、料理教室の他、雑誌やレシピ本の撮影等、様々な用途で使われます。キッチンとリビング・ダイニングをひとつの空間にまとめたことで複数人での利用にも耐える実用性と作業性を兼ね備えた料理研究家のためのキッチンに仕上がりました。また、デスクワークのために専用のスペースをキッチンの側に確保し、PCによるレシピの管理や資料の保管場所として使えるようなっています。
壁・天井は左官仕上げ、床は15mmの唐松無垢材に自然素材の塗料仕上げ。インテリアの仕上げは良質の天然素材を選び素材の持つ風合いを引き出すことでシンプルにまとめ、装飾的要素を省いた分壁面や飾り棚をしつらえることで季節や趣向の変化にも対応できる住まいにしました。
キッチンと収納棚のワークトップは天然の大理石を使い素材を統一することでまとまりをもたせました。粉物系料理を作る際のこね台にもなり、見た目も美しい大理石です。
ダイニングテーブルは料理教室や撮影時にも対応できる米松無垢材と鉄製の脚部をオーダーメイドで制作。南向きの窓から自然光が入り明るく心地よい空間になっています。
キッチン・ダイニングスペースの天井は米松材のルーバーを設け、木の持つ調湿効果や香り、温かみのある視覚効果で心地の良い空間をつくりました。
壁・天井の左官仕上げは游工房のサポートによりT様のご家族が施工されました。リフォームの時点で大阪にいたご主人様も「オレにも塗らせろ」と新幹線で一日帰ってきて参加され、家族皆で楽しみながら住まいづくりを実践されました。 自主施工は単にコストダウンのためだけではなく、住まいづくりに直接的に関わることで住まいに対するそれぞれの想いも深まる良い機会ではないかと思います。
T様の職業柄、調理道具や食器等のキッチン用品が多く、これらの物を使いたい時にすぐに取り出せ、いかに上手く収納できるかがリフォームの大きなポイントになりました。
収納力をアップさせるためにアイランド型のキッチンを中心に壁面をぐるりと囲う形で3面に収納棚を設置。キッチン自体にも調味料棚や鍋・フライパン等の大型の調理道具を入れるための引き出し、オープン棚等を設けました。収納力のアップと共に、必要なものを必要な場所に収め、作業をしながらでも必要なものがすぐ手の届くところにあるキッチンになりました。
また、一部の収納を「見せる収納」にして、飾り棚のように季節のものをしつらえたりきれいなビンに入れた食材や、お気に入りの調理道具を並べたり出来るようにしました。キッチンの実用性だけを追求するのではなく、収納にも「見せる収納」と「隠す収納」と言った役割に自由度をもたせることで、多くの時間を過ごすT様が居心地のよい空間を作れるようにました。
キッチンキャビネットのちょっとしたスーペスに調味料の棚を配置。オリジナルキッチンだから出来る細かい作りです。
ダイニングから向かって正面の壁面には円形に繰り抜いた飾り棚を配置。季節の物やお気に入りの食器などを飾り、キッチンの中にもT様の個性を出せるようにしました。
キッチンキャビネットのダイニング側にも収納棚を配置。必要なものを必要な場所にしまえるようになっています。
料理教室をやっている私の夢は、オリジナルキッチンを作ることでした。
以前から知り合いだった游工房の田中さんに依頼しました。
提案は 私のイメージを超えていました。
さすがプロ、完成予想図の中で 私の夢と希望が広がっていきました。
使用する機器や収納、さらに細かい注文も いっぱい お願いしました。
天井と壁の仕上げは、私たち家族も参加して塗ったんですよ。
『ケーキに生クリーム塗るのと同じだから』と言われて・・・、家族の楽しい思い出でにもなりました。
私にとって台所は職場、だから素敵に、そして居心地良くしたかったのです。
毎日、楽しく 快適に過ごしています。